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障害年金の初診日をリセットできる?社会的治癒とは

目次

1.初診日は変えられないのが原則

障害年金を請求するのに「初診日」を避けて通ることはできません。
初診日が障害年金の支給要件に関係しているからです。
この初診日は、以下の判断に使われます

  • 適用される年金制度:障害基礎年金か障害厚生年金か
  • 保険料の納付要件
  • 障害認定日(原則:初診日から1年6か月後)の決定

初診日は障害年金の受給可否や年金種別・等級に直結する重要事項ですが、一度決まった初診日を自分の都合で後から変えることは原則できません。

ところが、社会的治癒が認められると初診日が変わることがあります。

障害年金の申請に関する条件はこちら>>>をご覧ください。

2.社会的治癒とは

障害年金には、請求者の利益を守るための考え方として社会的治癒という考え方があります。

社会的治癒とは、治療を行う必要がなく症状が安定し、通常の生活が可能であったり、就労等により社会復帰したりしていることが認められる状態が一定期間あるときは、医学的には治癒していなくても社会保険の運用上、治癒したとみなされることがあります。
社会的治癒が認められれば、再発後の傷病は過去の傷病とは別の傷病として扱われます。
つまり、初診日をリセットできます。

厚生労働省の通達では、
「社会的治癒とは医療を行う必要がなくなって、社会復帰していることを言う。 ただし、一般社会における労働に従事している場合であっても原則、薬治下又は療養所内にいるときは社会的治癒とは認められない。 起因する疾病があっても社会的治癒が認められる場合は、その後に初めて医師の診断を受けた日を初診日とする。」とされています。

3.社会的治癒を活用する最大のメリットとは?

基本的に社会的治癒は請求者の利益を守るための概念です。以下の3つのケースに該当する場合に社会的治癒を主張すれば、メリットがもたらされる可能性があります。

  • 従来の初診日に受給要件を満たせなかったケース
  • 従来の初診日に国民年金に加入していたケース
  • 初診日がかなり前にあって証明が難しいケース

 3-1.従来の初診日に受給要件を満たせなかったケース

従来の初診日では「保険料納付要件」を満たしていなくても、新たな初診日時点で「保険料納付要件」が満たされていれば、障害年金を受給できる可能性があります。

◇「納付要件」はこちら>>>をご覧ください。

 3-2.従来の初診日に国民年金に加入していたケース

従来の初診日が国民年金加入中だった場合でも、社会的治癒により初診日を厚生年金加入期間中に変更できれば、障害厚生年金として請求できるようになります。

障害基礎年金は

  • 1級か2級に認定される必要がある
  • 報酬比例分の年金額が加算されない
  • 配偶者の加給が受給できない

障害厚生年金は

  • 1級から3級の認定
  • 報酬比例分の年金額が加算される
  • 配偶者の加給が受給できる

つまり、より広い等級・加算の対象になります。

◇「障害年金の種類」はこちら>>>をご覧ください。

 3-3.初診日がかなり前にあって証明が難しいケース

最初の初診日が古すぎてカルテが破棄され証明困難な場合でも、社会的治癒後の新たな初診日(最近の受診日)を使うことで初診日を証明できるケースがあります。

初診日を証明するためには、初診の病院で受診状況等証明書を作成してもらう必要があります。しかし、初診日から相当の年月が経っている場合、初診の病院が閉院していたり、カルテが破棄されていたりしていて、受診状況等証明書が作成できない場合があります。(カルテの法定保管期間は5年)

正確な初診日の証明は障害年金を受給するための必須条件です。初診日証明が初診の病院で取れないとなれば、別の方法を検討しなければなりません。このとき社会的治癒が認められると、再発後の受診日を初診日に変えられます。そのため障害年金の申請を行いやすくなるのです。

4.社会的治癒が認められる条件

社会的治癒は 法令上に明確に定義されている概念ではありません。 しかし、過去の判例から以下の3つの条件に該当する場合に認められやすいといわれています。

  1. 特段の医療の必要がなかったこと
  2. 症状が長期的に消失または安定していたこと
  3. 通常の社会生活が、ある程度の期間にわたって継続できていたこと

 4-1.【条件1】特段の医療の必要がなかったこと

症状が落ち着いていて治療を行う必要がない状態にあった事実を客観的に証明できるかどうかが、社会的治癒を認められる条件の一つといわれています。
例えば、
医師の指示で通院や服薬を中止したような場合、社会的治癒が認められる可能性は赤くなります。経過観察や予防目的の薬物投与を受けている場合も含まれます。

しかし、症状が良くなったからと自己判断で服薬や通院を中止した場合には、客観的な証明が取れません。この場合は社会的治癒が認められにくいため、注意が必要です。自己判断で通院や服薬をやめていただけでは、医療を行う必要がない状態だったかどうか判断できません。

医師の指示で通院や服薬を中断したなどの客観的な証明が必要です。

 4-2.【条件2】自覚症状や他覚症状が寛解・安定していたこと

自覚症状や他覚症状が寛解・安定していた事実を客観的に証明できるかも、社会的治癒が認められるための条件です。

たとえばたとえば内科疾患の場合は、健康診断の数値が正常の範囲内であったことが客観的証明として利用できます。
一方、精神疾患の場合は責任のある立場で働いていたり、難しい資格を取得したりできたことが客観的な証明になり得ます。

 4-3.【条件3】ある程度の期間にわたり通常の社会生活を送っていたこと

これまでに紹介した条件に加え、就労・家事など通常の社会生活を、おおむね5年程度続けられていたことが、社会的治癒が認められやすくなる条件といわれています。

ただし社会的治癒は法令上明確に定義のある概念ではありません。5年というのはあくまで目安です。
実際には通常の社会生活を送っていた期間が5年に達していなくても、社会的治癒が認められるケースもあれば、5年以上の期間があっても認められないケースもあります。

5.社会的治癒を証明する客観的な根拠になる書類

社会的治癒を主張するためには、以下の書類のような書類が役立ちます。できれば資料も申請時に添付したほうがいいでしょう。

  • 給与証明書:安定して働き続けていたことの証明
  • 健康診断書:診断結果が正常であれば、症状が寛解・安定していたことの証明になる
  • 資格証明書や表彰状:難易度の高い資格の取得や表彰は、通常の社会生活を送れていた証明になる

症状が寛解し通常に生活を送っていた根拠となる書類を複数そろえられると、主張が認められやすくなります。

6.社会的治癒で障害年金の申請する際の注意点

障害年金の申請に必要な書類は、社会的治癒を主張するために適切な情報で作成する(作成してもらう)必要があります。

  • 受診状況等証明書
    再発後の初診を受けた病院で取得。
    もし、前医のことなど記載されていた場合、「〇〇年に寛解し、以降治療は行われなかった」などの、記載が必要。
  • 病歴・就労状況等申立書
    再従来の初診日から現在までの状況を全て記入。特に、以下の項目について記載すること。
    • 最初の発病時の様子
    • 社会的治癒期間の様子
    • 再発後の様子
  • 診断書
    過去の病気が寛解して、治療を行わなくてよい期間が続いていた点を医師に記載してもらう<>/li>

7.社会的治癒は必ず認められるとは限らない

社会的治癒は、主張したからといって必ず認められるわけではありません。審査機関によって個別の状況をもとに、認定されるか否かを判定されます。

これらの状態にあった事実の客観的な根拠となる書類を集めたり、申請書類に社会的治癒に関する情報をきっちり反映させたりする必要があるため、社会的治癒の認定を受けるのは難しいとされています。

そのため社会的治癒を視野に入れて障害年金を申請していくには、年金制度の専門家である「社会保険労務士」の力を借りることが推奨されます。社会保険労務士ならば、請求者の状況に応じた適切なサポートを行えます。

8.社会的治癒が認められた実例

 8-1.【事例1】先天性の心疾患「ファロー四徴症」30年間普通の生活

<経緯>

  1. 先天性の心疾患「ファロー四徴症」のため小・中学校時代に複数回手術を受けた。
  2. その後体調は良好。短大ではテニスサークルに所属。短大卒業後、医療機関で勤務。健康診断でも問題なかった。
  3. 25歳で結婚し、子供2人を出産。31歳位からパートとして働き始めた。時々、テニスも楽しんだ。
  4. 45歳時に突然テニス中に倒れ、救急搬送される。心不全と診断されてカテーテル手術を受ける。
  5. 継続して慢性心不全として治療するが、徐々に悪化し入退院を繰り返す。

<結果> 上記の件を踏まえ、慎重に対応したところ、社会的治癒が認められ、障害基礎年金2級が決定しました。

 8-2.【事例2】うつ病 8年間寛解し再発した例

<経緯>

  1. 仕事のストレスでうつ病を発症
  2. 1年間心療内科を受診して、症状が改善。医師に相談し、通院を辞めた。
  3. その後8年間、就労し、家庭生活も問題なく送れた。
  4. 会社での部署異動で、ストレスが増大。再び、心療内科を受診。

<結果> 上記の件を踏まえ、慎重に対応したところ、社会的治癒が認められ、障害厚生年金2級が決定しました。遡及も認められました。

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